【seeds 防災】『ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点構想』『NaLAシステムの概要と漁業の防災適用への可能性』
- 2019/1/29
- 大学のシーズ
環境や気候の変化にも強い農林水産業を目指し北海道大学が掲げた
『ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点構想』
北海道大学が掲げるフードバレー構想のもと、昨年度、研究シーズと現場ニーズのマッチングの場であるロバスト農林水産工学科学技術先導研究会を設置、今年度、大学機能強化促進費による文科省の支援を受け、農林水産工学の研究教育に関するロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点を設置し学内外の窓口を一本化させました。また、6月に「知」の集積と活用の場 産学官連携協議会の研究開発プラットフォームである「ロバスト農林水産工学研究開発プラットフォーム」を設立し、農林水産業のロバスト化(堅牢化)と自然災害に対するフィールドのロバスト化を目指した研究開発を本格的に稼働させています。
https://www.eng.hokudai.ac.jp/others/robust/
食料・食品・水・土地・流通の危機:
世界の人口が、爆発的に急増するなかで、食糧生産の基盤となる世界の耕地面積は頭打ちとなり、一人当たりの耕地面積は減少を続けています。生産のみならず、食糧貯蔵も減少しています。さらに、世界の水の使用量は農業用水を中心に急激に増加しており、私たちの生命に欠かせない「水」も世界的な危機に直面しています。食糧生産から、加工、流通、消費、に至るまで、あらゆる局面で世界的な危機を迎えており、食資源の危機自体が、相互に関連して出現しています。その危機解決のため“食のバリューチェーン”※①を形成し、それぞれの局面をイノベーションによる新たな技術で、農林水産業を再構築していく必要があります。
一方で、近年の集中豪雨により農林水産業のフィールドに甚大な被害が頻発し、“食のバリューチェーン”の土台となるフィールド自身が脆弱だという現状があります。そのため、食のバリューチェーンを堅牢化するには農林水産業のフィールド自体のロバスト化が必要であり、そのためには、「新たなステージ」※②に対応した次世代型防災が求められます。そこで“防災技術イノベーション研究会”を新たに発足し、シンポジウムを開催するなど防災による農林水産業のフィールドのロバスト化を目指しています。
※➀食のバリューチェーンとは
農林水産物の「生産-加工・製造-流通-消費」に至る各段階の付加価値を連結させることにより、食を基軸とする新しい付加価値の連鎖をつくること。
※②新たなステージとは
国土交通省は、近年の集中豪雨等による被害の発生や、⾬の降り⽅が変化していること等を「新たなステージ」と捉え、平成27年1月に『新たなステージに対応した防災・減災のあり方』を提言しました。
『NaLAシステムの概要と漁業の防災適用への可能性』
北海道大学 水産科学研究院海洋生物資源科学部門・水産工学分野 教授 髙木 力
日本人の食卓に欠かすことのできない魚介類。それらは魚を獲る漁具や養殖施設で生産されています。しかし,こうした施設は水中にあり大規模なため,期待通りの機能性が確保されているのか,どこに強い力が作用しているのか,どこを改良すれば良いのか,わからないままとなっていることが殆どです。NaLA(Net geometry and Load Analysis) システムは漁具の仕様と海況条件をPCに入力することにより、その水中形状や動態、各部材に作用する力を独自の数値シミュレーション技術により解析・評価することを可能とします。
これにより、
・新しい漁具や施設の開発に実機を製作せずに評価できる。
・操業中の漁具の状態をモニタリングし漁労作業を支援する。
・設置海域での施設の耐流性・耐波性を評価する。
など、漁業生産施設の操業や設計の最適化を実現します。
さらに、NaLAシステムの解析結果から自然災害による事故を回避し、ダメージを最小限にする漁業生産施設の設計最適化をはかります。
お問い合わせ先
北海道大学ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点
〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目
TEL:011-706-6741
E-mail:robust@eng.hokudai.ac.jp