【昭和大学特集】携帯型補聴器用除湿ケースの開発と応用

昭和大学 薬理学講座 医科薬理部門 客員教授 稲垣昌博

■シーズ内容・特徴など

補聴器は1台約10~60万と高価であり、その耐用年数は4~5年と言われている。補聴器の故障原因の約半数は湿気によるもので、内部回路の腐食等によって生じるものである。また、湿気による金属酸化によりチューニングのずれが生じる原因となり、聴覚障碍者にとっては頭痛や耳鳴りなどを引き起こすなどの影響を及ぼす可能性がある。通常、補聴器を安定的に使用するためには、2か月に1回は補聴器販売店でのメンテナンスが推奨されており、簡易型真空乾燥機による補聴器内部の除湿が行われている。しかし、高齢者にとっては補聴器販売店へ足を運ぶことは容易ではなく、各家庭での除湿メンテナンスが望まれていた。

そこで、本補聴器ケースは高齢者でも簡便に扱え、携帯性に優れ、電気を必要としない「携帯型補聴器用除湿ケース」の開発を行った。乾燥システム(脱気)、サイズ、開閉性、気密性、耐久性を検討し、なるべく高齢者や手指の不自由な方でも簡単に扱える構造に仕上げた。本体の構造は、部品点数を少なくし、組み立てを簡易にし、低圧除湿の為の操作もポンピング部をプッシュするだけと簡単操作となっている。

また、補聴器用の空気電池は低圧操作により電池消耗を起こす可能性があるため、ケース内は低圧パートと常圧パートに分離されている。この「携帯型補聴器除湿ケース」は、携帯性に優れ、電源を必要とせず、就寝時や保管時に効率良く補聴器の湿気を除去出来るため、補聴器の品質の維持と寿命を延ばすことが可能となる。

■応用

「携帯型補聴器用除湿ケース」を特化した目的で作成したが、ケース内は低圧パートと常圧パートに分離されている点と低圧除湿が可能であることに着目し検討した。携帯性に優れ、電源を必要とせず、就寝時や保管時に効率良く補聴器の湿気を除去出来るため、補聴器の品質の維持と寿命を延ばすことが可能となる。このような特性を生かし、ケース内を使用目的に合わせて変更するにはゴム製の中ケースの変更により可能であり、さらに採算性を鑑み外ケースの変更も可能と思われる。

・低圧除湿を目的に補聴器以外にワイヤレスホン、SIMカードを始めとするコンピュータ関連品の保管・携帯にも可能性が見いだせると思われる。

・今後は補聴器が電池式だけでなく、夜間充電による補聴器タイプにも対応可能な外部電源との接続を検討することも可能と思われる。

・本ケースを20~30%大型化して空気電池チェッカーを組み込むことで、老人施設での補聴器を使用する入所者の方への適切な対応が可能となる。

■お問い合わせ

昭和大学統括研究推進センター 創造研究支援課

sangaku@ofc.showa-u.ac.jp

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