すい臓がんの治療に、新しい希望となるニュースが飛び込んできました!
アメリカで、すい臓がんに対する新しい飲み薬が承認されたというのです。
しかも、臨床試験では、生存期間の中央値が従来の治療と比べて約2倍になったとのこと。
これは、かなり大きなニュースなのでは?
でも、ちょっと待って。
飲み薬ということは、抗がん剤の点滴を受けなくてもよいのでしょうか? すい臓がんの患者さんなら誰でも使える? そして、日本ではいつから使えるの?
気になることがいろいろあります。
そこで今回は、長年すい臓がんの早期発見に取り組んでこられた、JA尾道総合病院の花田敬士先生にお話を伺いました。
そもそも、どんな薬?
今回注目されているのは、米国の製薬企業Revolution Medicinesが開発した「ダラクソンラシブ(daraxonrasib/開発コード:RMC-6236)」という薬です。
がん細胞の増殖に関わる「RAS」というタンパク質の働きを抑える、新しいタイプの分子標的薬です。
1日1回服用する飲み薬で、2026年8月にアメリカで承認されました。
では、この薬は、すい臓がんの治療をどのように変えるのでしょうか?
Q1. 今回の新薬、どこが画期的なのでしょうか?
今回の新薬の登場は、膵癌治療における大きな進歩だと考えています。
膵癌の多くでは、がん細胞の増殖に関係する「RAS」というタンパク質に異常がみられます。これまでは、この働きを薬で抑えることが難しいとされてきました。
今回の薬は、このRASの働きを直接抑える新しいタイプの治療薬です。従来の抗がん剤とは異なる仕組みでがんの増殖を抑えることができる点が画期的です。
これまで治療の選択肢が限られていた患者さんに新たな可能性が生まれたことを高く評価しています。
Q2. 生存期間が約2倍! これはどれほどすごいこと?
臨床試験では、生存期間の中央値が従来の治療の6.7か月に対し、新薬では13.2か月と約2倍に延長しました。
治療が難しい進行膵癌において、これだけの生存期間の延長が示されたことは非常に意義のある成果です。
ただし、これは臨床試験に参加した患者さん全体の統計的な結果であり、すべての患者さんの余命が2倍になるという意味ではありません。
もちろん、この薬によって膵癌が完全に治るようになったわけではありませんが、患者さんやご家族にとって大きな希望につながる結果だと思います。
Q3. すい臓がんの患者さんなら、誰でも使えるの?
今回の新薬は、主に進行した膵癌の患者さんを対象とした治療薬です。
現時点では、すべての膵癌患者さんに使用できるわけではなく、治療歴や病状などによって対象が限られています。
一方、今後の臨床研究によって、より早い段階の膵癌や、手術後の患者さんにも治療の選択肢が広がる可能性があります。
新しい薬の登場をきっかけに、膵癌治療全体がさらに進歩することを期待しています。
Q4. 飲み薬なら、治療の負担も軽くなる?
飲み薬であることは、患者さんにとって大きなメリットになる可能性があります。
点滴治療に比べて病院で過ごす時間を短縮でき、仕事や家庭生活を続けながら治療を受けやすくなることが期待されます。
ただし、飲み薬だから副作用が少ないというわけではありません。
発疹や下痢、口内炎などの副作用がみられることもあり、定期的な診察や検査を受けながら、安全に治療を続けることが大切です。
Q5. 日本ではいつから使えるのでしょうか?
2026年10月現在、日本ではまだ承認されておらず、一般の診療で使用できる段階にはありません。
日本でも臨床試験が進められていますが、承認の時期については、現時点では明らかになっていません。
今後、安全性と有効性が十分に確認され、日本の患者さんにも新しい治療の選択肢が届けられることを期待しています。
Q6. すい臓がん治療は、これからどう変わっていくのでしょうか?
私は約20年間、地域の医療機関と連携して膵癌を早期に発見する「尾道方式」に取り組んできました。
今回の新薬の登場は、これまで治療が難しかった進行膵癌に対しても、新しい治療の可能性が広がっていることを示しています。
一方で、膵癌を治すためには、現在も早期発見と適切な治療が極めて重要です。
今後は、早期診断技術の進歩と新しい治療薬の開発がともに進むことで、膵癌の治療成績がさらに改善することを期待しています。
「早く見つけること」と「より良い治療を届けること」。この両輪を進めることで、膵癌で命を落とす方を一人でも減らしていきたいと考えています。
≪お話を伺ったdoctor≫
花田敬士(KEIJI HANADA)MD,PhD
JA尾道総合病院・副院長・内視鏡センター長・医療福祉支援センター長
広島大学大学院医系科学研究科消化器内科学 客員教授
編集後記
すい臓がんに飲み薬が登場! しかも、生存期間が約2倍に!
飲み薬ということにも驚きましたし、効果も高いので、患者さんにとっては、本当に希望に繋がると感じました。
ただ、花田先生のお話を伺って、改めて感じたのは、新しい薬ができたからといって、すべての患者さんが使えるわけではないということ。そして、飲み薬だからといって、副作用が少ないわけでもないということ。
「生存期間が約2倍」という数字だけが一人歩きしないよう、正しく理解することも大切ですね。
そして、心に残ったのが、先生の最後の言葉。
「早く見つけること」と「より良い治療を届けること」。
早期発見と新しい治療。その両方が進んでいくことで、すい臓がんの未来が少しずつ変わっていくことを期待したいと思います。

