今年は、インフルエンザの流行の立ち上がりがかなり早くなっています。
日本だけでなく、アジアの多くの国でも、例年より早い時期から患者数の増加がみられています。
となると気になるのが、
「ワクチン、もう打ったほうがいい?」
ということ。
「流行が早いなら、ワクチンも早く打てばいい」と思ってしまいますが、実はそれほど単純ではないそうです。
感染症がご専門の聖マリアンナ医科大学の國島広之先生に今年のインフルエンザ対策について聞きました。
「早く打てばいい」とも言い切れない理由
インフルエンザワクチンは、接種してから十分な免疫が得られるまで、おおむね2週間程度かかります。
一方で、ワクチンの効果はずっと同じように続くわけではなく、接種後、数か月すると徐々に低下していきます。
つまり今年は、
「すでに始まっている流行に備えたい」
でも、
「冬本番にもワクチンの効果を期待したい」
この2つを考える必要があります。
たとえば9月に接種すれば、現在の流行には早く備えられます。
しかし、本格的な冬の流行期となる1~2月には、接種から4~5か月が経過しています。特に高齢者では、時間の経過によるワクチン効果の低下も考える必要があります。
だからといって接種を遅らせすぎれば、すでに始まっている流行に対して、ワクチンによる備えがない期間が長くなってしまいます。
今年は、このバランスが悩ましいのです。
Q. 先生ご自身なら、いつ接種しますか?
「僕自身であれば、現在は人が集まる屋内や公共交通機関などではマスクを着用し、ワクチンは10月頃に接種します」
ここで大切なのは、
「全員、10月に打つのが正解」という意味ではない
ということ。
年齢や基礎疾患、生活環境などによっても判断は変わります。
また、「冬の後半に効果が弱くなるなら、2月頃にもう一度打てばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
ただ、日本では成人のインフルエンザワクチンは原則としてシーズン1回接種。成人全般に年2回接種することが公的に推奨されているわけではありません。
海外ではどうしている?
今年の早い流行を受け、韓国では公的なワクチン接種の開始時期を前倒ししています。
一方、シンガポールのように、日本とはインフルエンザの流行パターンが異なり、年2回の接種が行われることがある地域もあります。
つまり、
「海外が早く接種しているから、日本も同じようにすればいい」
というわけではありません。
その国の流行状況や季節性などに合わせて考える必要があります。
じゃあ、今できる予防は?
ワクチンだけでなく、感染リスクの高い場面では、いくつかの対策を組み合わせることが大切です。
先生なら、
「ワクチン接種を基本として、流行期には人が集まる屋内などでのマスク着用、適切な換気、体調が悪いときには無理に外出しない、といった対策を組み合わせる」
と説明するそうです。
◎ マスク
インフルエンザを含む呼吸器感染症は、感染者から排出される呼吸器の粒子を介して広がります。
そのため、流行している時期に、混雑した屋内など感染リスクの高い場所でマスクを着用することは、合理的な対策と考えられます。
◎ 換気
換気の悪い屋内環境では、感染が広がりやすくなることがあります。
人が集まる場所では、適切な換気も大切です。
◎ 手洗い
もちろん基本的な衛生対策として大切です。
ただし、インフルエンザについては、手洗いだけで感染を大きく減らせるという強いエビデンスがあるわけではありません。
◎ 咳エチケット
周囲に飛沫を飛ばさないために大切なマナーです。
ただし、咳エチケットだけでインフルエンザ感染をどの程度防げるのかについては、十分な科学的根拠があるわけではありません。
つまり、
「これさえやれば大丈夫!」という対策ではなく、いくつかの対策を組み合わせることがポイントです。
もしインフルエンザになったら?
抗インフルエンザ薬は、必要な場合にはできるだけ早く、特に発症から48時間以内に治療を開始すると効果が期待できます。
ただ、ここにも誤解があります。
「48時間を過ぎたら、薬を飲んでも意味がない」わけではありません。
高齢者や基礎疾患のある方、入院が必要な方、症状が重くなっている方などでは、48時間を過ぎていても抗ウイルス薬による治療が必要になる場合があります。
「もう2日過ぎちゃったから……」と自己判断せず、心配な症状がある場合は医療機関に相談してください。
今年のポイントをまとめると
今年は、
「流行が早いから、ワクチンも早ければ早いほどいい!」
という単純な話ではなさそうです。
すでに流行が始まっている今は、
感染リスクの高い場所ではマスクなどで対策する。
そしてワクチンは、今の流行と冬後半の効果の両方を考えて接種時期を決める。
そして、もうひとつ大切なのが、接種時期を悩みすぎて、接種するつもりだったのに機会を逃してしまわないこと。
「何月何日に打つのがベストか」を細かく考えること以上に、接種を希望する方がきちんと接種機会を確保することも大切です。
そして今年、最も難しいのは――
今の流行がこのまま拡大するのか。
いったん落ち着いて、冬にもう一度大きな流行が来るのか。
これは現時点では分かりません。
だからこそ、今後の流行状況も見ながら、その時々に合った対策をしていく必要がありそうです。
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