【seeds 計測】元気な骨格筋細胞培養技術と定量的張力計測技術
- 2018/2/21
- 大学のシーズ
大阪工業大学
工学部生命工学科 長森英二 准教授
この技術は in vitro 環境において骨格筋細胞を機能的に培養する方法
とこの培養法によって骨格筋細胞が発する活性張力を定量的に再現性良く
測定する技術です。これにより高齢化社会におけるサルコペニア問題の
対策など応用が期待できます。
【 研究の概要 】
本研究室では、微生物を用いた物質生産から再生医療に資する細胞・組織製造に至るまで、生物が関わる反応
や機能を活用する“バイオものづくりプロセス”を研究対象としている。
バイオ反応の特性を理解し、その生産プロセスを速度論や物質収支の観点で工学的に設計・構築・効率化する技術が求められる。目的とする生物現象を司る
主たるパラメーターを理解・同定、そのパラメーターの制御によって現象を自在に操る、この一連を実現するために必要なあらゆる道具・技術が我々の研究対象となる。
ここで紹介するシーズ技術は in vitro 環境において骨格筋細胞を機能的に培養する方法(元気な骨格筋細胞培養法)とこの培養法によって
骨格筋細胞が発する活性張力を定量的に再現性良く測定する技術である。
高齢社会における加齢性筋肉量減少(サルコペニア)の問題への対策など,骨格筋研究や骨格筋を活性化する食品や分子を探索する研究への応用が期待される。
このシーズ技術以外にも,細胞や組織培養技術を異分野技術と高度に融合することで,in vitro 環境において生体内に近い機能を発揮させ,
定量化する技術に興味を持ち研究に取り組んでいる。
細胞が本来存在している環境(細胞が心地よい環境)を可能な限り試験管内に再現することが,高度で機能的なバイオリアクターの設計には重要と考えている。
【研究の特長・従来技術との比較】
通常の培養法では収縮力を発揮する骨格筋細胞を培養することは難しいが,生体内で骨格筋が受けている周期的な電気刺激を模倣した培養環境を整えることで機能的な骨格筋培養を可
能とした。
骨格筋細胞が発する活性張力を簡便に再現性良く長期的に定量可能な手法はこれまでなかったが、微小な短冊型に加工されたコラーゲン薄膜を培養支持体として活用することで細胞の自
然な配向を誘導することに成功し活性張力を半導体ひずみ計で定量可能とした(特許取得).
【研究の状況】
応用
【課題、今後の方向性】
本技術にご興味を頂いたユーザーが速やかにテスト,活用することが可能な汎用型の装置を低価格で供給できる体制を整えることである。
また創薬スクリーニングに活用する場合にはハイスループットに多検体をテスト可能な装置の開発も必要となろう。
より機能的で生体内に近い複雑な構造を有する“リアルな骨格筋組織”の培養法を構築し,本技術と融合していくことも将来的な課題である。
【用途・効果】
In vitro 培養にもかかわらず、生体内の筋肉をテストしているかのような評価が可能であり、欧米を中心に倫理的問題から削減が要望される動物実験の一部を代替することが可能と考えられる。
【関連資料・特許・文献・参考事項】
Fujita, H., Shimizu, K., Nagamori, E.*, Novel method for measuring active tension generation by C2C12 myotube using
UV-crosslinked collagen film. Biotechnology and Bioengineering, 106(3), 482-489. (2010)
筋細胞の出力装置及び筋細胞の出力評価方法,特許番号 05549547(2014 年 5 月 30 日),発明者:藤田英明 清水一憲 長森英二
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