大腸がんと診断されたら、患者は何を聞き、何を知っておくべきか。
ー大腸がん専門医が「特に知っておいてほしい」5つのことー
大腸がんと診断されたとき、多くの方がまず気になるのが「ステージ」ではないでしょうか。もちろんステージは重要です。しかし、実際の治療はステージだけで決まるわけではありません。では、患者さんは何を知り、何を主治医に確認しておけばいいのでしょうか。
国立がん研究センター中央病院副院長・大腸外科科長 金光 幸秀先生に「大腸がんについて、患者さんに特に知っておいてほしいこと」を伺いました。
ー大腸がんと診断されたら、やはり一番気になるのは「ステージ」だと思います。ステージが分かれば、治療法も決まるのでしょうか?ー
『実は、「ステージ」だけで治療が決まるわけではありません。患者さんはステージに最も関心を持たれることが多いのですが、実際には、腫瘍が結腸にあるのか直腸にあるのか、がんがどのくらい深くまで達しているのか、リンパ節転移が疑われるのか、さらに直腸がんの場合には肛門を温存できるのか、といったことによって治療方針は大きく変わります。同じステージⅡ、ステージⅢであっても、治療内容がまったく異なることがあります。』
ー「ステージはいくつですか?」だけではなく、自分のがんがどこにあって、どのような状態なのかまで知っておくことが大切なんですねー
『そうですね。ステージだけにとらわれず、ご自身のがんの状態を知っていただきたいと思います。また、特に直腸がんでは、「手術の質」も重要です。』
ー「手術の質」とは、どういうことでしょうかー
『直腸がんでは、手術の完成度が再発率に直結します。がん治療というと抗がん剤などの薬物療法が注目されがちですが、直腸がんでは手術の質が予後を大きく左右するからです。
つまり、どの施設で治療を受けても同じ結果になるわけではないということ。「どこで治療を受けるか」ということは、治療法そのものと同じくらい重要だと考えていただきたいと思います。』
―病院を選ぶことも、治療の一部ということですねー
『そう考えていただいてよいと思います。』
ー直腸がんでは、「肛門を残せるのか」ということも患者さんにとって非常に気になる問題ですねー
『はい、これは、ぜひ早い段階で相談していただきたいことです。直腸がんでは、永久人工肛門になる可能性があります。また、肛門を温存できた場合でも、治療後に頻便や便失禁など、排便機能が変化することがあります。こうしたことは、その後の生活の質に直接関わってきます。ところが、患者さんの中には遠慮して聞かない方が非常に多いんです。』
ー不安から、聞きづらいのかもしれませんねー
『「肛門は残せますか?」
「治療後の排便はどうなりますか?」
生活に関わる大切な問題ですから、最初に相談していただけたらと思います。』
ー最近は、手術の前に抗がん剤や放射線治療を行うこともあると聞きます。これは、受けられるなら受けた方がいいのでしょうか?ー
『いいえ。抗がん剤や放射線治療は、誰にでも必要というわけではありません。最近は術前に化学療法や放射線療法を行う治療も広がっていますが、すべての患者さんに利益があるわけではありません。治療には副作用もありますし、生活への影響もあります。』
ーでは、治療を提案されたとき、患者さんは何を確認すればいいでしょう?ー
『「この治療を受けることで、自分の再発リスクがどのくらい下がるのか」ぜひ具体的な数字で聞いてみてください。治療のメリットだけではなく、副作用や生活への影響も含めて考えることが大切です。』
ー術後については、どう考えたらよいですかー
『患者さんは「手術が終われば治療終了」と思いがちですが、
手術後の排便機能はどうなるのか。
食事はどうするのか。
いつ頃から仕事に復帰できるのか。
どのくらいの間隔で経過をみていくのか。
こうした術後の生活まで含めて「治療」だと考えていただきたいと思います。』
ー大腸がん専門医から患者さんへメッセージをお願いしますー
『大腸がんと診断されると、「何ステージなのか」「がんを取れるのか」といったことに意識が向きがちです。しかし、治療を考えるうえで大切なのは、それだけではありません。
自分のがんはどこにあり、どんな状態なのか。
どのような治療が必要なのか。
肛門は残せるのか。
治療によって再発リスクはどのくらい変わるのか。
そして、治療後の生活はどうなるのか。
分からないこと、不安なことは遠慮せず、早い段階から主治医に相談してください。治療そのものだけでなく、その先の生活まで見据えて考えていくことが大切です。』

