【seeds 環境浄化】天然物質を利用した環境浄化
- 2019/3/25
- 大学のシーズ
『天然物質を利用した環境浄化』
鹿児島大学 理工学研究科(理学系)・地球環境科学専攻 教授 河野元治
■研究の背景および目的
鉱物、微生物、有機物は、天然の環境浄化物質として機能しています。粘土鉱物(※)による土壌や堆積中の陽イオン固定、鉄鉱物によるヒ素汚染された地下水や鉱山排水の浄化、土壌中の腐植物質による重金属や有害有機分子吸着固定などが良く知られた例。これらは低コストかつ環境負荷をかけない高機能性材料として利用できます。その機能は、イオンや化合物の種類および溶液の化学的条件によって大きく変化するため、目的に合わせた材料の選択と反応条件の設定が重要になります。
※粘土鉱物:ナノサイズの微細鉱物で種々の化学物質との反応性が著しく高い
■おもな研究内容
○土壌の重金属吸着特性に関する研究
○鉄鉱物の表面電荷と重金属イオン吸着機構に関する研究
○バクテリアおよび腐植物質の表面電荷特性とイオン吸着に関する研究
○粘土鉱物の結晶化学と外部イオンとの反応性に関する研究
○粘土鉱物のアミノ酸およびたんぱく質に対する反応性に関する研究
天然の環境浄化物質(鉱物、微生物、有機物)は外部溶液のpHや塩濃度の状態に応じて、プラスまたはマイナスの表面電荷を発生します。そのため溶液中に電荷を持つ元素や有機分子が存在すると、それらを静電的に吸着・除去する特性を持ちます。対象となる有害元素の種類や溶液のpH、共存イオンなど様々な因子を検討し、電荷状態を考慮して適切な環境浄化物質を選ぶことで、有害元素の浄化が可能になります。
■期待される効果
鉛、銅、亜鉛、ヒ素などの重金属イオンに汚染された水の浄化を想定しています。重金属イオンの他、リン酸や硝酸などの無機イオン、有機酸や種々の陰イオン性有機化合物の浄化への応用も可能です。また未利用資源として存在する種々の火山灰土壌や産業廃棄物などに含まれる鉱物、微生物を環境浄化物質として利用するための研究に応用できます。種々の粘土鉱物や有機物質の環境浄化材料としての評価や機能性の向上、天然物質を用いた環境浄化材料の開発も行っています。
■共同研究・特許などアピールポイント
○ロックウールリサイクル材の有効利用研究開発
○微生物起源有機分子に対するスメクタイトの安定性
○粘土鉱物の高温安定性に関する研究
○風化環境での微生物によるイオン濃集および鉱物生成
○含鉄酸性水を坑廃水処理材を用いて処理した場合の反応生成物の解析
■コーディネーターからひと言
土壌中の鉱物や微生物が起こす化学反応を研究。天然物質による汚染水の浄化や未利用資源の環境浄化物質としての応用に結びつきます。土壌や廃棄物の有効活用、汚染水の処理などのご相談に対応することが可能です。
■研究分野:環境鉱物学、粘土鉱物学、環境化学、環境微生物学
■キーワード:粘土鉱物、有機物、微生物、土壌、貴金属、イオン吸着、環境浄化
http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~kawano/index.html