産学連携を活用するために

『産学連携を活用するために』

一般社団法人 産学連携推進協会 理事 岩田まこ都

その①

『写真広告の評価検証について』

2018年6月より、美容医療サービスも含む医療機関のウェブサイト、メルマガ等につき広告規制が課されていることはご存知でしょうか。治療などの体験談で根拠の薄いものや効果を誤認させる恐れのあるビフォーアフター写真等は、医療法施行規則(省令)にて、医療に関する広告としては認められないものとされました。

これは一見産学連携とは関係の無いことのように感じますが、企業様から頂く案件の中には美容や健康食品に対するものも多く、それら企業のチラシやサイトの多くに、自社製品を試した体験談やビフォーアフター写真が掲載されています。

今回の規制対象は医療関係の広告についてですが、以前より化粧品や健康食品等の広告についても様々な規制が実施されており、健康問題への意識の高まりから今後益々厳しいものになると考えられます。(医療広告と同様に、自社製品を試した体験談やビフォーアフター写真につき規制がかかる可能性もあります。)

 

現在当協会では、ネイルの機器に対する効果についての評価検証を大学教授に依頼していますが、その教授からも「美容的付加価値のための写真(ビフォー、アフター)のみの掲示は危険で、第三者の定量評価が必要となる。具体的には写真等をもとにした我々によるgrade 評価が必要で、被験者も第三者にすることで科学性を高めるべきである。」といったご意見を頂いており、今までの広告に関する意識を改め、しっかりとした科学的エビデンスを提示することが今後は更に大事になっていくとおっしゃっていました。

医療分野から始まった今回の広告規制ですが、規制に伴って顧客の判断基準のハードルは上がり、ビフォーアフターについてのエビデンスを求める声も高まってくると思われます。企業が顧客に対し自社製品の良さをアピールすることは大切ですが、そのアピールに対し根拠のあるエビデンスを専門家がつけること、すなわち産学連携による評価検証(教授のエビデンス)の需要は、今後ますます増えて行くと感じています。

その②

『臨床試験を産学連携で行う手順について』

美容系企業様より製品に関する評価検証を大学教授に依頼される場合がございますが、化粧品や健康器具の効果測定のために被験者参加の臨床試験を行う場合は、必ず『倫理審査委員会』の承認を受けることが必要となります。(倫理審査委員会とは、 臨床研究の実施又は継続の適否やその他臨床研究に関し必要な事項について、被験者個人の尊厳、人権の尊重その他の倫理的観点及び科学的観点から調査審議するため、臨床研究機関の長の諮問機関として置かれた合議制の機関となります。「厚生労働省HP」 より抜粋)倫理審査委員会の承認を得るためには、最初に試験計画書(プロトコル)の作成を行います。

ただこれを企業自身が当協会のようなコーディネーターや教授のアドバイスを受けながら行う場合、作成に不慣れなことからかなりの時間がかかることとなります。また計画書を作成し委員会に提出できたとしても、一度で通らず再審査となる場合もございますので、その手戻り分も計画に入れておく必要があります。さらに委員会の承認がおり試験がスタートしても、被験者の脱落やスケジュール調整などが発生する可能性もあり、企業の担当者様は試験期間が終わるまで気を抜くことができません。その後順調に必要なデータ収集が出来れば、いよいよ解析評価を先生方にお願いしすることになります。

しかし、倫理審査委員会の承認の遅れなどにより当初予定していた試験実施期間から大幅に遅れがでてしまった場合、ご多忙な先生方のリスケジューリングが上手くゆかず、予定通りに進まないという危険性もあります。(受託臨床検査事業を行う民間企業へプロトコル作成や倫理委員会開催等を依頼した場合、上記の流れはスムーズになりますが、臨床試験以外に委託費用が発生することとなります。)

以上により、大学教授による評価検証を検討する企業様におかれましては、上記のような様々なケースをあらかじめ想定し、展示会や商品の発表などに間に合うよう余裕をもったスケジューリングをすることがとても大切になります。

一見不自由に思える法改正ですが、宣伝や営業活動の根拠となる確固としたエビデンスを備えることのできる企業にとっては、他社との大きな差別化に繋がります。そのためにも、正確で使い勝手の良いエビデンスを得ることができる産学連携という選択肢は企業様にとって大きなメリットとなります。ただその際には、企業とは違ったタイムスケジュールで動く大学との連携には十分な時間をとった上で、両者間の調整を行う我々の様な産学連携のコーディネーターをうまく活用することを推奨いたします。

 

産学連携推進協会

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